判例紹介


親族・相続


1.遺言執行者の職務権限の範囲

相続人の母は倉庫業者との間で倉庫賃貸借契約を締結していた。また同人は遺言により遺言執行者を指定していた。また同人は遺言により遺言執行者を指定していた。
同人の死亡後、遺言執行者が上記倉庫賃貸借契約に基づき倉庫業者の倉庫に遺産である本件動産(絵画等)を管理していたところ、故人の債権者である銀行からの借入債務につき連帯保証をしていた者が同借入債務を故人に代わって弁済した。保証人はその弁済額を相続人に対して求償する権利を保全するため遺言執行者を相手取って遺言執行者が倉庫業者に対して有する倉庫契約上の動産引渡請求権について仮差押命令の申立をし、東京高裁がこれを認めた。


2.公正証明遺言における経験則の成否〈遺言無執行確認等請求事件最高裁平成16.2.26判決)

一般に、公証人は公正証書遺言を作成する場合、公証人役場保管用の証書原本、依頼者の請求により交付される正本、証書の謄本等を作成する。正本・謄本等を作成する場合、署名押印部分を除いてコピーによる写しを用いるのが通常である。
本件に於いて、遺言者の法定相続人が公正証書遺言の原本を閲覧謄写したところ、公証人の署名押印がない謄本が交付されたため、法定相続人は遺言未完成ないし方式不備による無効を主張した。公証人らは、証人として、原本の写しをとり末尾の署名押印部分を切り貼りして謄写したのち謄本に署名押印しなかったと抗弁したが、大阪高裁は弁解内容の細部に齟齬があることを理由として遺言原本の未完成ないし不備による遺言無効を認定した。しかし、最高裁は、公証人の弁解内容は大筋に於いて一致しておりふしぜんな点はないものと公正証書を有効とし原審の事実認定は経験則に反するとした。
本件は、裁判所が経験則〈一般人の社会常識の因果法則)によって事実認定する手法として参考になると思われるので紹介した。